すべり症による腰痛、その原因を特定!画像診断・治療法・予防策まで詳しく解説

腰痛の原因の一つとして考えられる「すべり症」。なんとなく怖いイメージはあるけれど、実際どんな病気なのかよく分からない方も多いのではないでしょうか。この記事では、すべり症の定義から始まり、腰痛との関係、具体的な原因、診断方法、治療法、そして予防策までを分かりやすく解説します。すべり症の種類や、加齢によるもの、外傷によるものなど、原因別に詳しく説明することで、ご自身の症状への理解を深めることができます。さらに、日常生活での注意点や適切な運動といった予防策を知ることで、将来の腰痛リスク軽減にも役立ちます。この記事を読み終える頃には、すべり症についての不安が解消され、適切な対処法が見えてくるはずです。

1. すべり症とは何か?

すべり症とは、背骨を構成する椎骨の一部が、本来あるべき位置からずれてしまう状態のことを指します。このずれによって、周辺の神経や組織が圧迫され、腰痛をはじめとする様々な症状が現れることがあります。

1.1 すべり症の定義と脊椎の構造

人間の背骨は、椎骨と呼ばれる骨が積み重なって構成されています。椎骨と椎骨の間には椎間板というクッションの役割を果たす組織があり、これらが連なって脊柱を形成しています。すべり症は、この椎骨が前後にずれてしまうことで起こる脊椎疾患です。正常な状態では、椎骨は整然と積み重なっていますが、様々な要因でこの構造が崩れると、すべり症を発症します。

脊椎は、大きく分けて頸椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨の5つの部位からなります。すべり症はどの部位にも発生する可能性がありますが、特に腰椎に起こりやすいことが知られています。これは、腰椎が上半身の体重を支えるという大きな負担を担っているためです。

1.2 すべり症の種類

すべり症は、その発生原因によっていくつかの種類に分類されます。主な種類は以下の通りです。

種類 説明
変性すべり症 加齢に伴う椎間板や椎間関節の変性が原因で起こります。最も頻度の高いすべり症です。
分離すべり症 椎弓と呼ばれる椎骨の一部が骨折することで、椎骨が分離し、不安定になることで起こります。特に成長期のスポーツ選手に多く見られます。
外傷性すべり症 交通事故や転倒など、強い外力によって椎骨が骨折し、ずれることで起こります。
先天性すべり症 生まれつき椎骨の形成に異常がある場合に起こります。比較的まれなすべり症です。
病的すべり症 骨腫瘍や感染症など、他の病気が原因で椎骨が破壊され、ずれることで起こります。

2. 腰痛とすべり症の関係

腰痛は、多くの人が経験する一般的な症状です。その原因は様々ですが、すべり症も腰痛を引き起こす原因の一つとなります。この章では、すべり症がどのように腰痛を引き起こすのか、また腰痛以外のすべり症の症状について詳しく解説します。

2.1 すべり症が腰痛を引き起こすメカニズム

すべり症とは、背骨を構成する椎骨が本来の位置からずれてしまう状態のことです。椎骨がずれると、周囲の神経や靭帯、筋肉などを圧迫したり、刺激したりすることがあります。これが腰痛の主な原因となります。

特に、神経が圧迫されると、坐骨神経痛と呼ばれる、お尻から足にかけての痛みやしびれが生じることがあります。

また、すべり症によって背骨の安定性が低下すると、腰の筋肉に負担がかかり、筋肉の炎症や痛みを引き起こすこともあります。さらに、ずれた椎骨が他の骨と摩擦することで炎症が生じ、痛みが発生することもあります。

腰痛の程度は、すべり症の程度や神経の圧迫の程度、個々の身体の状態などによって大きく異なります。軽度のすべり症では、ほとんど痛みを感じない場合もありますが、重度のすべり症では、日常生活に支障が出るほどの強い痛みやしびれが生じることもあります。

2.2 腰痛以外のすべり症の症状

すべり症の症状は腰痛だけではありません。以下のような症状が現れることもあります。

症状 説明
下肢のしびれ 神経が圧迫されることで、足にしびれが生じることがあります。片足だけにしびれが出たり、両足にしびれが出たり、症状は様々です。
下肢の筋力低下 神経が圧迫されることで、足の筋力が低下することがあります。これにより、歩行が困難になったり、つまづきやすくなったりすることがあります。
間欠性跛行 しばらく歩くと足に痛みやしびれが生じ、休むと症状が軽減することを間欠性跛行といいます。すべり症によって神経が圧迫されることで、間欠性跛行が生じることがあります。
排尿・排便障害 重度のすべり症では、まれに排尿や排便に障害が出ることがあります。このような症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。

これらの症状は、すべり症の進行度合いによって様々です。初期の段階では自覚症状がない場合もありますが、症状が進行すると日常生活に支障をきたすこともあります。そのため、少しでも気になる症状がある場合は、医療機関を受診し、適切な検査と診断を受けることが重要です。

3. すべり症の原因を詳しく解説

すべり症の原因は、大きく分けて5つのタイプに分類されます。それぞれのタイプの特徴や原因について詳しく見ていきましょう。

3.1 加齢による変性すべり症

変性すべり症は、加齢に伴う椎間板や靭帯、関節などの変性によって起こります。椎間板の弾力性が低下したり、靭帯が緩んだりすることで、椎骨が前方にずれてしまうのです。このタイプは、中高年以降に多く見られます。

3.2 分離すべり症

分離すべり症は、椎弓という椎骨の一部に亀裂が生じることで起こります。この亀裂によって椎骨が不安定になり、前方にずれてしまうのです。特に、スポーツなどで腰に負担がかかることが多い若い人に多く見られます。激しいスポーツをする10代の子供に発症することがあります。

3.3 外傷性すべり症

外傷性すべり症は、交通事故や転倒など、腰に強い衝撃が加わることで起こります。骨折などを伴うことが多く、他のすべり症と比べて症状が重くなる場合もあります。

3.4 先天性すべり症

先天性すべり症は、生まれつき椎骨の一部が形成不全であることで起こります。幼少期から症状が現れることもありますが、成長とともに徐々に進行していく場合もあります。

3.5 病的すべり症

病的すべり症は、骨腫瘍や感染症などの病気が原因で起こります。骨が弱くなることで椎骨がずれてしまうのです。他のすべり症と比べて稀なケースです。

すべり症の種類 主な原因 好発年齢
変性すべり症 加齢による椎間板や靭帯の変性 中高年以降
分離すべり症 椎弓の亀裂 10代~20代
外傷性すべり症 腰への強い衝撃 年齢問わず
先天性すべり症 椎骨の形成不全 幼少期~
病的すべり症 骨腫瘍、感染症など 年齢問わず

このように、すべり症の原因は多岐にわたります。自分のすべり症がどのタイプに当てはまるのかを知ることで、より適切な治療や予防を行うことができます。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、専門医に相談しましょう。

4. すべり症の診断方法

すべり症の診断は、医療機関で専門家によって行われます。主な診断方法は問診、診察、そして画像診断です。これらの方法を組み合わせて、すべり症の有無や程度、種類などを正確に判断します。

4.1 問診と診察

まず、患者さんの症状や既往歴などを詳しく聞き取ります。腰痛の発生時期や状況、痛みの種類や程度、日常生活への影響などを確認することで、すべり症の可能性を探ります。腰痛の発生時期や状況、痛みの種類や程度、日常生活への影響などを確認することで、すべり症の可能性を探ります。

次に、身体診察を行います。腰椎の形状や可動域、神経学的検査などを行い、すべり症の特徴的な所見がないかを確認します。腰椎の形状や可動域、神経学的検査などを行い、すべり症の特徴的な所見がないかを確認します。 姿勢や歩行の様子を観察することも重要な情報となります。

4.2 画像診断(レントゲン・MRI・CT)

問診と診察である程度の診断はできますが、確定診断のため、そしてすべり症の程度や種類を正確に把握するためには画像診断が不可欠です。

検査方法 目的 内容
レントゲン すべり症の有無と程度の確認 正面と側面からX線を照射し、骨の状態を撮影します。正面と側面からX線を照射し、骨の状態を撮影します。 すべり症では、椎骨が前後にずれている様子が確認できます。また、変性すべり症でみられる椎間板の狭小化や骨棘の形成なども確認できます。
MRI 脊髄や神経の状態の確認 強力な磁場と電波を用いて、脊髄や神経、椎間板などの状態を詳細に描出します。強力な磁場と電波を用いて、脊髄や神経、椎間板などの状態を詳細に描出します。 すべり症によって神経が圧迫されているかどうかを確認できます。
CT 骨の状態の詳細な確認 X線を断層的に撮影し、骨の構造を三次元的に把握できます。X線を断層的に撮影し、骨の構造を三次元的に把握できます。 レントゲンよりも詳細に骨の状態を確認できるため、骨折や腫瘍の有無なども診断できます。

これらの画像診断の結果を総合的に判断し、すべり症の診断を確定します。どの検査が必要かは、症状や診察結果によって判断されます。

5. すべり症の治療法

すべり症の治療法は、症状の程度や種類、患者さんの年齢や生活状況などを考慮して決定されます。大きく分けて保存療法と手術療法の2種類があります。

5.1 保存療法

多くのすべり症は、まず保存療法で経過観察を行います。保存療法は、痛みや痺れなどの症状を和らげ、日常生活の活動性を維持・改善することを目的としています。

5.1.1 薬物療法

痛みや炎症を抑えるために、次のような薬物が使用されます。

薬の種類 作用
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) 痛みや炎症を抑えます。ロキソニン、ボルタレンなどが代表的です。
アセトアミノフェン 解熱鎮痛作用があります。カロナールなどが代表的です。
神経障害性疼痛治療薬 神経の損傷による痛みを和らげます。リリカ、タリージェなどが代表的です。
筋弛緩薬 筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減します。ミオナールなどが代表的です。

5.1.2 コルセットによる固定

腰椎の動きを制限し、安定させることで痛みを軽減します。コルセットの種類や装着時間は、医師の指示に従ってください。

5.1.3 理学療法(ストレッチ・運動療法)

ストレッチや運動療法は、腰周りの筋肉を強化し、柔軟性を高めることで、腰椎の安定性を向上させます。理学療法士の指導のもと、適切な方法で行うことが重要です。具体的には、腹筋や背筋のトレーニング、ストレッチなどが挙げられます。また、水中での運動療法は腰への負担が少ないため、有効な場合があります。

5.2 手術療法

保存療法で効果が得られない場合や、神経症状の悪化がみられる場合、馬尾症候群や膀胱直腸障害などの重篤な症状が現れた場合には、手術療法が検討されます。手術療法には、除圧術、固定術、矯正術など様々な方法があります。どの手術方法が適切かは、すべり症の種類や程度、患者さんの状態によって異なります。

手術療法は、神経への圧迫を取り除き、痛みや痺れなどの症状を改善することを目的としています。手術にはリスクも伴うため、医師とよく相談し、メリットとデメリットを理解した上で決定することが重要です。

6. すべり症の予防策

すべり症は、一度発症すると完全に元の状態に戻すことは難しい場合もありますが、進行を遅らせたり、症状の悪化を防いだりすることは可能です。日常生活における注意点と適切な運動を心がけることで、すべり症の予防、あるいは症状の悪化を防ぐことに繋がります。

6.1 日常生活での注意点

日常生活では、腰への負担を軽減するための工夫が重要です。

注意点 具体的な方法
正しい姿勢を保つ 立っているときは背筋を伸ばし、お腹に力を入れて腰を反りすぎないように意識します。座っているときは、深く腰掛け、背もたれを利用して背中を支えましょう。猫背にならないように注意し、長時間同じ姿勢を続けないように心がけてください。
重いものを持ち上げるときは注意する 重いものを持ち上げるときは、膝を曲げて腰を落とすようにし、背中ではなく脚の力を使って持ち上げます。また、急に重いものを持ち上げたり、身体をひねったりする動作は避けましょう。荷物を持つ際は、両手に均等に重さを分散させることも大切です。
適切な体重を維持する 過度な体重増加は腰への負担を増大させ、すべり症のリスクを高めます。バランスの良い食事と適度な運動を心がけ、適切な体重を維持しましょう。
腰を冷やさない 腰を冷やすと血行が悪くなり、筋肉が硬くなって腰痛が悪化しやすくなります。特に冬場は、腹巻やカイロなどで腰を温めるように心がけましょう。
長時間の同一姿勢を避ける デスクワークや車の運転など、長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り、軽いストレッチや体操を行うようにしましょう。同じ姿勢を続けることで、腰への負担が蓄積しやすくなります。
体に合った寝具を選ぶ 柔らかすぎるマットレスや高すぎる枕は、腰に負担をかけ、すべり症の悪化につながる可能性があります。自分の体に合った硬さのマットレスや枕を選び、睡眠中の姿勢にも気を配りましょう。

6.2 適切な運動

適度な運動は、腰周りの筋肉を強化し、すべり症の予防に効果的です。

6.2.1 腰痛体操

腰痛体操は、腰周りの筋肉を鍛え、柔軟性を高めるのに役立ちます。ただし、痛みがある場合は無理に行わず、医師や理学療法士の指導のもとで行うようにしましょう。インターネットなどで紹介されている体操を自己流で行うと、症状を悪化させる可能性があります。

6.2.2 ウォーキング

ウォーキングは、腰への負担が少ない有酸素運動です。正しい姿勢で歩くことで、腰周りの筋肉を強化し、血行を促進することができます。無理のない範囲で、毎日継続して行うことが大切です。30分程度のウォーキングを週に数回行うだけでも効果が期待できます。

6.2.3 水泳

水泳は、浮力によって腰への負担が軽減されるため、腰痛がある方にもおすすめの運動です。特に、クロールや背泳ぎは、腰周りの筋肉をバランス良く鍛えることができます。水中ウォーキングも効果的です。

これらの予防策を実践することで、すべり症の予防、または症状の悪化を防ぐことに繋がります。しかし、すでに症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な指導を受けることが重要です。

7. すべり症のよくある質問

ここでは、すべり症に関するよくある質問にお答えします。

7.1 すべり症は自然治癒しますか?

残念ながら、すべり症は骨の構造的な変化であるため、自然治癒は難しいです。一度ずれてしまった椎骨が自然に元の位置に戻ることはありません。しかし、症状が軽度の場合や、加齢による変性すべり症の初期段階では、保存療法によって痛みなどの症状を軽減し、日常生活に支障がない状態を維持することは可能です。

7.2 手術は必ず必要ですか?

いいえ、必ずしも手術が必要なわけではありません。多くの場合、保存療法で症状の改善が見られるため、まずは保存療法を試みます。保存療法で効果がない場合や、神経症状の悪化が見られる場合、馬尾症候群や膀胱直腸障害などの重篤な症状が現れた場合に手術が検討されます。医師とよく相談し、自身の症状や生活状況に合った治療法を選択することが重要です。

7.3 妊娠中にすべり症になったらどうすれば良いですか?

妊娠中は、ホルモンバランスの変化やお腹の大きくなることによる姿勢の変化などから、腰痛が悪化しやすくなります。すべり症がある場合、さらに症状が悪化する可能性があります。妊娠中にすべり症の症状が現れた場合、あるいは悪化した場合は、速やかに医師に相談することが大切です。
妊娠中は使える薬や治療法が限られるため、医師の指示に従って適切な対応をすることが重要です。
下記に妊娠中のすべり症で注意すべき点と対応策をまとめました。

症状 対応策
軽い腰痛 安静にする、姿勢に気を付ける、マタニティベルトを使用する
強い腰痛、足のしびれ すぐに医師に相談する
排尿・排便障害 緊急性を要するため、すぐに医師に相談する

出産後も腰痛が続く場合は、産婦人科医だけでなく、整形外科医の診察を受けることも検討しましょう。

8. まとめ

この記事では、すべり症による腰痛の原因、診断方法、治療法、予防策について解説しました。すべり症は、椎骨が前方にずれることで神経を圧迫し、腰痛をはじめとする様々な症状を引き起こします。原因は加齢、外傷、先天的なものなど様々です。診断には画像検査が重要で、レントゲンやMRIで確定診断を行います。

治療は、保存療法と手術療法に大別されます。保存療法では、薬物療法、コルセット、理学療法などを行い、症状の緩和を目指します。これらの保存療法で効果が不十分な場合や、神経症状の悪化がみられる場合には、手術療法が検討されます。すべり症は日常生活での姿勢や運動に気を付けることで予防できる可能性があります。日頃から正しい姿勢を意識し、適度な運動を心がけましょう。何かお困りごとがありましたら当院へお問い合わせください。

新飯塚中央整骨院